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東御の刀鍛冶

日本刀ができるまで

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宮入 法廣

サムライの象徴であり、日本独自のものづくりの真髄といわれる「日本刀」。
武士の時代が終焉して150年余り経つ現代においても、その伝統は脈々と受け継がれています。そんな日本刀の世界きっての風雲児といわれる刀匠・法廣とは、いったいどんな人物なのか――

◆刀剣界の一匹狼 
かつて、「サムライの魂」といわれた日本刀。しかし、19世紀末に1000年以上続いた武士の時代が終わると、日本刀を差したサムライの姿も見られなくなりました。さらに太平洋戦争後、GHQ占領下の日本では、日本刀を作ることはもちろん、竹刀を使う剣道すら禁じられていました。
けれど、日本刀の作り手が途絶えてしまったわけでは決してありません。
21世紀においても、サムライの時代と変わらない日本特有の刀づくりの伝統を受け継いでいる刀工たちがいます。その中でも、傑出した刀剣マエストロとして一目を置かれているのが宮入法廣です。

名人と謳われた刀匠・宮入平(清宗)を父に持ち、人間国宝の宮入平(行平)を伯父に持つ法廣は、江戸時代から続く日本刀の名門・宮入家の血筋を継ぐサラブレッドです。ただ、彼は若かりし頃から我が道を行く一匹狼でした。
 日本刀にはそれぞれ流派があり、宮入一門の流派は「相州伝」ですが、1978年に國學院大學文学部史学科を卒業した法廣が弟子入りしたのは、あろうことか流派の異なる「備前伝」の名匠・正峯氏でした。
人間国宝の隅谷氏は、丁子という独自の華麗な刃文を生み出した芸術家。その卓抜した創造性の高さに、法廣は流派を超えて心酔したのです。
ただ、伝統を重んずる刀剣界では、異なる流派に弟子入りするなど前代未聞。血統も流派も超越した考えを持つ法廣は、刀剣界の異端児とみなされていました。

◆最年少で無鑑査に昇りつめた輝かしい刀歴
1983年、隅谷氏の下で備前伝を極めた法廣は、さらに作域を拡げるべく父清平の直弟子として9年に渡って相州伝の作刀に励みます。
やがて独立して長野県東御市に鍛錬場を構えると、「新作名刀展」で高松宮賞、文化庁官賞、薫山賞、寒山賞、全日本刀匠会理事長賞、「新作小品展」で産経新聞社賞などを次々に受賞。
1995年には、最高位の「無鑑査」の栄誉に輝きました。無鑑査とは、全国にいる350名近い刀工の中でも新作名刀展で特賞を8回以上受賞したトップレベルの十数人の刀匠にだけ与えられる称号。当時39歳だった法廣は、最年少で無鑑査に昇りつめたのです。

それを機に、法廣の活躍の場が国内外に拡がっていきました。
2002年にはニューヨークの「メトロポリタン美術館」に収蔵されている刀剣の整備のために招聘され、2012年にはメトロポリタン美術館所蔵の江田船山古墳出土鉄剣の復元制作をしています。
2002年から2014年にかけては、皇族 高円宮家の 承子女王、絢子女王(現在は守谷絢子) 、典子女王(現在は千家典子)の御守り刀を献上しています。
2003年には、モンゴル出身の名横綱・青龍の土俵入り太刀も制作。
2004年には、同年、東御市発足記念事業として初の個展「刀匠宮入法廣の世界」展を開催して好評を博しました。
2008年、日光東照宮と共にユネスコ世界遺産にも登録されている「二荒山神社」の御神宝の剣を奉納したのを機に、2008年には御神宝の剣、2012年に御神宝の直刀を謹作。
さらに同神社の依頼により、2015年から2019年にかけて黒田家所蔵の国宝「日光一文字」の復元模造を手掛け、2021年には日光二荒山神社神殿の落成記念に国宝「国俊写小太刀」の復元模造を奉納しています。

◆世界で唯一無二の刀子アーティスト
豪胆な日本刀の世界とは別に、宮入法廣にはみやびな作家の顔もあります。刀子とは、天平時代の貴人たちに愛用された掌大のエレガントな文具や装身具のこと。法廣は優美な象牙の彫り物「」や、精緻な彫金が施された刀子を、刀身作りから装飾まで一貫して創作できる世界で唯一無二の刀子アーティストなのです。

2009年には、宮内庁正倉院事務所の依頼により、正倉院宝物「黄楊木杷鞘刀子」の復元に成功。さらに翌年も宮内庁正倉院事務所の依頼で正倉院宝物「小三合刀子」を復元しています。
復元模造とは、国宝や重要文化財の刀剣が作られた時代の素材や技術に則って寸分違わぬ宝物を再現するということ。3Dプリントではコピーし得ない非常に精緻な再現技術が必要とされています。
国宝の刀の復元模造も完璧にできる法廣には、その後も文化財復元の依頼が絶えず、2011年には埼玉県立博物館の依頼で国宝「稲荷山鉄剣」を復元するなど、日本の文化遺産を継承する活動に多大な貢献をしています。

◆刀剣界の最高位「正宗賞」を受賞
 2010年には、満を持して「新作名刀展」で最高位の「正宗賞」に輝きました。
現在、正宗賞を受賞した刀匠は日本に2名しかいません。
翌2011年には、長野県「無形文化財」に認定され、2013年 長野県に太刀を寄贈しています。
同年には銀座松崎画廊で「刀匠 宮入法廣作刀展2013」を開催。高円宮憲仁親王妃久子様も鑑賞に訪れました。

2016年から2018年にかけては徳川ミュージアムの依頼により、水戸徳川家伝来の刀「台切光忠」の復元模造に挑み、関東大震災で真黒な焼身となった幻の名刀を見事に蘇らせました。この名刀は国内外で人気のアニメ『刀剣乱舞』にも登場することから海外でも話題になりました。
2023年から2024年にかけても同自徳川ミュージアムの依頼で、関東大震災で焼けた水戸家の短刀「竜正宗」の復元模造を手掛けています。
 また、京都国立博物館の依頼により、名物「吉光」の復元も手掛け、2018年に開催された同館初の刀剣展「のかたな 匠のわざと雅のこころ」で展示されて大きな注目を集めました。

2019年にはそれまでの輝かしい刀歴が評価され、「平成名刀名工展」で最高位の大賞に輝いています。
2020年には、世界中に多くのファンを持つ人気アニメ「刀剣乱舞」の制作会社ニトロプラスの依頼で「はじまりの剣」をテーマとした3振りの刀「天・地・人」を創作し、「人」を奈良県天理市の神宮に奉納。
2021年には、伊勢神宮に刀子「犀柄白檀鞘金荘刀子」を奉納。
2022年から2023年にかけては、南北朝時代の鉄の風合いを追求した太刀が2年連続で正宗賞候補になりました。

宮入法廣は還暦を越えた現在も、自身の個性を生かした刀や刀子を精力的に創作しており、復元模造で得た技術と研究成果を生かした最高レベルの現代刀作りに果敢に挑み続けています。